園長のひとりごと

こども園、福祉全般、寺院関係、走ること、食べること、いろいろと。

「運動会」から「スポーツフェスティバル」へ

10月2日(土)にあさりこども園のスポーツフェスティバルを行いました。昨年までは「運動会」でしたが、今年からは「スポーツフェスティバル」に名称を変更しています。日本語では”運動遊び祭り”とかになるんでしょうか。今までの運動会とは少し内容を変えることになり、その目的を理解してもらいやすくするために名称も変更をした方がいいのではないか、そう判断したわけです。

ではどのような内容に変えたのかですが、その前に今までの運動会に対して感じていたことを説明します。

 

あさりこども園の運動会は、園生活の中でつけてきた力を保護者に見てもらうもので、その日に向けて特別な何かを練習するといったことはありませんでした。走る力がどのようについてきたかを0歳児のハイハイから5歳児のリレーまで見てもらい、自分の得意な動きや最近できるようになったことを見てもらい、親子で運動遊びを楽しむ、そんな運動会です。「子どもの運動面の発達を保護者に伝える」「親子のふれあいを提案する」「普段の保育をより深める」の3つが運動会の目的で、その目的にかなったものではあったし、大きな問題があるわけではなかったのですが、これでいいんだろうか?と考えることはありました。

考えていたのは

◯運動会全体の時間の中で動いている時間より待っている時間が長かったこと。
クラス毎に競技を行うため、他の子の競技を見ている時間、つまり待ち時間は長くなります。待つ体験も意味のあることですが、そうだとしてももう少し短くできないものかと思っていました。

◯みんなの前で動けなくなり、成長を見てもらうことができない子も出てくること。
待ち時間で集中力が落ちることもあるだろうし、たくさんの保護者が見ていることによる緊張もあると思います。どうしても動き出せない子が必ず出てきます。そこで感じる葛藤にも子どもの育ちに意味はありますが、結果的に十分に体を動かし得意なことやできるようになったことを見せられずに終わってしまうことがあるのも事実です。

◯他の子の様子を見て生まれた「自分もやってみたい!」をその場では実現できないこと。
人がやっているのを見て自分もやりたくなるのは集団の良さです。それをきっかけにやってみる、そのことでできることが増えるのは、子どもの成長の特徴です。他者から受ける刺激を大切にしたい、そこから生まれる「やってみたい!」の気持ちを大切にしたいと考えて保育を行っています。だからこそ、運動会当日にやってみたくなったことがあっても、他の種目や時間の関係で実現する場を十分に作れていないことに対してもったいなく感じていました。

今までの運動会を否定するわけではありません。やり終えた後の子どもたちの満足した表情や子どもの成長を喜んでいる保護者の表情を見てきて、やはり運動会のような行事は大切だと毎年思いながら、でも上記のことをどうしても考えてしまっていました。

 

保育指針にはこんなことが書かれています。

1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい及び内容>健康>ねらい
①明るく伸び伸びと生活し、自分から体を動かすことを楽しむ。
②自分の体を十分に動かし、様々な動きをしようとする。

3歳以上児の保育に関するねらい及び内容>健康>ねらい
①明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう。
②自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする。

3歳以上児の保育に関するねらい及び内容>人間関係>内容
⑦ 友達のよさに気付き、一緒に活動する楽しさを味わう。
⑧ 友達と楽しく活動する中で、共通の目的を見いだし、工夫したり、協力したりなどする。

この観点から運動会を見てみると、もっと工夫はできると思いました。今までの運動会の捉え方から一歩抜けだし、名称を変えて気持ちを新たにして、子どもが自分から体を動かすことを楽しみ、充実感を味わい、様々な動きを進んで楽しもうとする、そんな運動会を追求できるはずだと。

 

そんな思いから、運動面の発達を個々に見てもらうのは「走る」ことのみとし、後は親子で運動を楽しんでもらう、しかも夢中になって体を動かしてしまう内容に変更し、その名称をスポーツフェスティバルとすることにしました。ハレとケでいうと、スポーツフェスティバルは「ハレ」です。祭りのように夢中になれるハレ(行事)があることで、ケ(普段の保育)がより深まってきます。これが「普段の保育をより深める」という目的の意味です。フェスティバル(祭り=ハレ)としたのにはそんな意味もあります。

今回のスポーツフェスティバルは、クラス毎に走る姿(ハイハイする、歩く、一人で走る、友達と一緒に走る、リレーで競争するなど)を見てもらい、普段から行っている雑巾がけで保護者と勝負し、その後は複数の運動ブースを渡り歩いてもらって親子でしっかりと楽しんでもらいました。後半の各ブースでの遊びは、どのブースから始めるか、どれをやってどれをやらないか、1つの運動を何回挑戦するか、いつ終わるか、これらは全て親子で決めてもらいます。それぞれのブースで想定していた遊び方があったんですが、子どもたちが自分で考えて新しい遊び方を見つけたり、それを見ていた子が真似したり、他の子と勝負したり協力したりと、人間関係の育ちもしっかりと見せてもらいました。

帰る際の十分体を動かしてとても満足そうな子どもたちの表情を見て、これがベストとは言わないけど、方向性としては問題ないと思いました。各ブースで行われた運動遊びは事前にこども園で楽しんでいたものですし、どれを採用するか子どもたちの投票で決めたりと、内容に子どもたちも参画してきました。そのこともあってか、予行練習なしでも子どもたちに戸惑いはありませんでした。内容変更をしたばかりで、しかも予行練習がなかったことには保育者に若干の不安があったようですが、今回体験したことでその不安は解消されたんじゃないでしょうか。

今回の反省はもちろん来年に活かしていきます。変える必要があることは変えていきます。必要があればいつでも変化する柔軟な構えこそが、子どもたちに関わる仕事をする人にとっては大切だと再確認できました。

 

スポーツフェスティバルの実施に向けて、職員が新聞を作成して保護者に対してお伝えしてきました。どんな目的で、どんな内容で、といったことを載せた新聞です。枚数がたくさんあるのでここに載せるのはやめておきますが、興味のある方にはPDF版をお渡ししますので、下記リンク先から連絡してください。

 

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