園長のひとりごと

こども園、福祉全般、寺院関係、走ること、食べること、いろいろと。

2020年9月

【原美穂さん】
今年の箱根駅伝で2年ぶり5度目の総合優勝を果たした青山学院大学陸上部のことは、みなさんもよく知っていると思います。その陸上部の寮母をされている原美穂さんが書かれた本を読みました。タイトルは「フツーの主婦が、弱かった青山学院大学陸上競技部の寮母になって箱根駅伝で常連校になるまでを支えた39の言葉」です。原晋監督のやってこられたことは知っていましたが、監督とは違う立場から陸上部を支えていた原美穂さんのことは知らなかったので、この本を読むことで青学の強さがより理解できるようになりました。

ファシリテーター
特に印象的だったのは、常に学生が自主的に陸上に取り組めるようにと考えて接していたことです。寮生活のルールを学生自身が作り上げられるよう導いたり、学生の抱える課題に対して自分で解決の道を見つけられるよう、声をかけるべきか、かけないべきかを選手の状態を見て対応を変えていたりしていて、これってファシリテーター(組織を活性化する人、力を引き出す人)だよなというのが率直な印象でした。学生の性格・調子・周りの子との関係などを見て、監督とは違う寮母としての立場から「今どう関わることがその子の力を引き出すことにつながるか」を考え実践してこられたことがたくさん書かれている本で、スポーツチームに限らず職場でも応用できることがあると感じました。(読んでみたい方にはお貸ししますので声をかけてください)

【よく見る】
学生にどんな声かけをするか、どんな役割を与えるかなど、簡単な判断ではないことばかりだったと思いますが、原さんは「その見極めは、ふだんその子と接していればわかる」と書いています。マニュアルがあるわけではないですし、一人ひとり違っているので、その子をよく見るしかないということでしょう。高齢者の自立を支援する、子どもの育ちを促すといった私たちの仕事も、まずはよく見ることが基本です。その人がどんな状態にあるか、家庭の状況はどうか、何を求めているのかといったことをよく見て摑み、その上でどんな環境を用意してどんな支援をするかが決まります。人と接する仕事、支援する仕事はファシリテーターの視点が必要だと言えるかもしれません。

【役割】
グループホームの入居者Mさんは、合歓の郷の事務所に出勤して来られ、管理者のSさんの横で作業をされることがあります。さくらこども園の園庭で使用する竹を切って運搬する作業に加わってくれることもありました。Mさんはそれらが自分の仕事、自分の役割だと感じておられるように見え、生き生きと活動される様子から「役割」があることがいかに大切かを考えさせられています。この「役割」は自然と出てきたものというより、Sさんをはじめとするグループホームの職員のみなさんがMさんをよく見て、今の状態や求めているものに合った役割を作りだしたもので、そのことでMさんの力を引き出してくれていると思っています。役割を作りだすまでの苦労、作りだしてからの悩みはもちろんあると思いますが、Mさんらしく生き生きと生活してもらうためにと考えてくれたみなさんの思いが感じられ、うれしく思っています。

【引き出し合う】
高齢者が生きがいを感じて生活するために必要な社会的要素は、「人との良好なつながりがある」「大切な役割を担っている」「人の役に立つ活動をしている」ことであると明らかにした研究があります。人との関係の中で、人や社会に貢献できる役割があることは、高齢者に限らず誰にとっても大切なことです。利用者一人ひとり、子ども一人ひとりが「自分には役割がある」「自分は人に貢献している」と感じられるよう、一人ひとりをよく見て支援をしていきましょう。職員同士でも相手のことをよく見て、互いの力を引き出し合う関係をつくっていきましょう。

【冬の備えを】
朝晩がずいぶん涼しくなり、季節は確実に秋へ移りました。こうなると、少し気が早いですが冬の備えについて考え始めます。今年の冬はインフルエンザと新型コロナウイルス感染症の両方への対策が必要になります。例年よりインフルエンザワクチンを接種する人は多くなると思われるので、花の村の職員の予防接種の時期は全体的に早くなります。今までとは違ったスケジュールで冬への備えを進めていくことになりますので、みなさんもそのつもりで準備をしておいてください。少しでもいい状態で今年の冬を迎えられるようにしましょう。