園長のひとりごと

こども園、福祉全般、寺院関係、走ること、食べること、いろいろと。

2019年9月

【特別扱い】
『チルドレン』(伊坂幸太郎著)という小説の中にこんな場面が出てきます。
盲導犬を連れた目の見えないAに対し、見ず知らずのおばさんが善意で五千円を渡して立ち去ります。それを聞いたAの友人はおばさんにではなくAに対して「ふざけるな、何でおまえがもらえて、俺がもらえないんだよ!どうしておまえだけ特別扱いなんだよ!」と言って怒り、そのおばさんの行方を探しはじめます。
目の見えない人に対して全く特別扱いせず接するやり取りがこの小説ではたくさん出てきます。そうしたやり取りのシーンを読む度に、すがすがしい気持ちになると同時に、自分ならどう反応するだろう?と考えてしまいます。

車いすテニス】
10年以上前になるでしょうか。日本の記者がテニスのロジャー・フェデラー選手に対し、「なぜ日本のテニス界には世界的な選手が出てこないのか」と質問をしたところ、その質問に対して彼は「何を言っているんだ?日本には国枝慎吾がいるじゃないか!」と返したそうです(つい先日まで行われていたテニスの全米オープンでは、国枝選手はダブルス車いすの部で準優勝でした。)。この話を聞いたとき、日本と外国とでは障害者スポーツに対する捉え方が全く違っていることを気づかされましたし、私自身の理解が浅かったことを思い知らされました。

この2つの話は障害について考えるときにいつも浮かんでくることです。

基本的人権
GHやかたのIさんの研修報告を読ませてもらいながら、この給与コメントを書いています。Iさんが受けたのは「認知症を知り、支え合うために」という内容の研修で、基本的人権について学びながら、認知症の方の人権も当然尊重することを確認するものだったようです。私たちの事業理念である『「ひとり」を大切にする』を実践していくためには、基本的人権の尊重が大前提です。これは当然のことで、誰もがそう理解しているはずです。では、その基本的人権の解釈は古いものになっていないでしょうか?時代に合ったものになっているでしょうか?人種による差別、性別による差別が行われていて、そのことについて声を上げることが難しい時代がありました。でも、それではいけないと考える人、行動する人が増えてきて、法律が整備されてきました。その他のことでも、以前は問題として認識されていなかったけど現在は問題として取り上げられ法整備の議論が行われている事柄がたくさんあります。性別(性的少数者のことなど)、名前(選択的夫婦別姓のことなど)、国籍(外国にルーツを持つ人の権利のことなど)などがそうです。そうした基本的人権に関する事柄に対して、自分はどう考えているか?あちこちで議論されている内容と比較してどうか?時代に合わせてアップデートできているか?そんなことを確認する作業は必要です。

不登校
文科省が、不登校の対策として学校にもどすことをゴールとしないことにしたそうです。不登校という言葉の前は、学校嫌い、行き渋り、登校拒否などと言われていました。全て学校へ行くことが前提で、それをしないことを意味する言葉です。登校している状態こそがあるべき状態で、登校していない状態が異常だという考えが基になっています。何気なく「不登校」と使っていましたが、丁寧に考える必要がありそうです。今後はフリースクールや家での学習体制が整備され、全ての子どもが自分を抑えつけることなく教育を受けることができるようになっていくと思われます。これも基本的人権の尊重に関係していることです。

【バービー人形】
着せ替え人形のバービー人形に、肌や髪、目の色、体型などが異なる様々なタイプが登場しています。多様性や個性を認めることの大切さを発信することが目的のようで、車椅子に乗った人形や義足をつけた人形も登場しました。すごい変化だと思い実物を見たくなったのですが、日本では車いすの人形しか販売されていなかったので、アメリカの通販で購入しました。子どもが触れるおもちゃの世界でも、様々な個性を当たり前のこととして受け入れる流れは間違いなく起きています。日本にもこの流れが入ってくるのかどうか、入ってくるとすればどんな形で入ってくるのか、注意して見ておきたいと思います。

【改めます】
日本の衆議院議員のうち女性の割合は10.2%で、これは193カ国中165位だそうです。男女の比率を同じにする目標はあるようですが、全く進んでいないようです。比率を同じにするなら男女それぞれの定数を決めればいいのに何故それをしないのだろうか?と考えていたとき、花の村の理事、評議員も男性が多いことに気づきました。決して女性差別をしていたわけではないのですが、結果として男性が多数となっているのが現状です。この点は改めていきたいと考え、今後新たな理事、評議員を選任する際には男女比率が同じ近づいていくように候補者選びをしていくことにしました。理事、評議員のメンバー構成からも、性別などで差別することなく個をきちんと見ていくという思いが伝わるようにしていきます。その他のことでも変更を検討して方がいいことがあるかもしれません。気になっていることや提案があれば、ぜひその思いを聞かせてください。『「ひとり」を大切にする』を様々な形で表現していけるような組織にしていきたいと思っています。よろしくお願いします。