園長のひとりごと

こども園、福祉全般、寺院関係、走ること、食べること、いろいろと。

2021年11月

【隣のレジは早い】
テレビでも取り上げられたことで話題になり、書籍も出版された「お寺の掲示板」のことが気になっていて、いろいろ調べています。そこに書かれている言葉の意味にもですが、どんな言葉を使っているかに強く興味を持ったからです。難しい仏教の教えを少しでも分かりやすく伝えるにはどんな言葉を使えばいいか。今の時代に合ったもので、若い人にも興味を持ってもらうためにはどんな言葉を選べばいいか。そうした工夫が感じられるので勉強になります。

例えば「他人と比べると不幸が始まる。他人のしたこととしなかったことを見るのではなく、ただ自分のしたこととしなかったことだけを見ればいい。」という内容を伝えようとするとき、「隣の芝生は青く見える」ということわざを使って説明されることがよくあります。これが間違っているわけではないのですが、生活実感からくる深い納得感は少ないというのが私の印象です。ではその言葉の代わりに、東京のあるお寺の掲示板で使われていた「隣のレジは早い」だったらどうでしょうか?

レジが混んでいるときどの列に並ぶかは、人それぞれ考えがあると思います。私の場合は並んでいる人数とカゴの中身の量から総合的に判断し、最も早いと思われる列に並びます。並んだ後は自分の列のことだけを考えていればいいのですが、どうしても隣の進み具合が気になります。隣の方が早くても損をするわけではないのに、実際に隣が早いと悔しくなったりします。そんな実体験があるので、「隣のレジは早い」と言われると「そうそう!すごくよく分かる!でも隣を気にしても仕方ないよな。」とすんなり納得できます。

NHKの元アナウンサーの田中浩史さんは「言葉が伝わるというのは、相手の心が揺さぶられたときだ。心が揺さぶられて初めて伝わるものだ。」と話しておられます。「隣の芝生は・・・」の場合は「うん、そうだよね」だったのが、「隣のレジは・・・」だと「わかる!」となります。大げさかもしれませんが、そちらの方がより心が揺さぶられます。生活の中で実感していることの方がより共感しやすくなります。

私たちの仕事は、子ども、利用者、一緒に仕事をしている職員とのコミュニケーションが欠かせません。そのコミュニケーションの中で言葉の選択を頻繁に行っています。言葉の選択肢は実はかなり多いのに、気づけば誰に対してもどんなシーンでも同じ言葉を使って伝えようとしていないでしょうか。この人に対してはAよりもBを、このシーンではBよりもCをと、使う言葉や表現方法を工夫することで伝わり方は変わってくるはずです。言葉はなかなか伝わらない、でも何とかして伝えたい。だからこそどんな言葉を使うかを考え、言葉の見直しをしていきましょう。

 

【若い人に伝える】
津高校の2年生7名が企業見学に来てくれました。福祉の仕事に対しての興味がどれだけあるのか聞くことはできませんでしたが、関心度に関わらず仕事を見に来てくれるのはありがたいことです。福祉の仕事は地域の根っこを支える仕事で、だからこそ若い人に興味を持ってもらい、その仕事を選んでもらえるような取り組みをし、事業を継続させていかなければいけないと考えています。福祉の仕事をどう伝えれば興味を持ってもらえるのかは試行錯誤中ですし、伝わったとしてもそれが形になるのは何年も先のことです。長いスパンで考えて取り組んでいかなければいけません。

今回の説明では、ブランディング会議でまとめてくれた「花の村の3つの強み」を使いました。

①世代を超えたごちゃまぜの交流による化学反応がある
・0歳から100歳まで幅広い交流ができる
・ご近所さんのような関係
・子どもも高齢者も互いに刺激を受ける
②豊かな自然を感じながら生活できる
・施設の周りの自然を自由に活用できる
・地域全体が活動エリア
③非日常の体験ができる
・温泉入浴を楽しめる
・家庭や地域で行われなくなった行事を楽しめる

単なる施設紹介とは違うものが伝えられたんじゃないかと思っていますが、この強みの表現も万能ではないので、相手によって表現を変えながら花の村のことを発信していくつもりです。ぜひみなさんも伝える機会があれば、それぞれに表現を工夫しながら3つの強みを使った発信をしてみてください。そして「この伝え方はうまくいった」というものがあれば、それをみんなで共有し、言葉・表現・発信方法を磨いていきましょう。