園長のひとりごと

こども園、福祉全般、寺院関係、走ること、食べること、いろいろと。

14/50『塞王の楯』

50冊チャレンジの14冊目は『塞王の楯』(今村翔吾)。直木賞受賞作には触れておきたかったことと、穴太衆(あのうしゅう)に興味が湧いたことがこの本を選んだ理由です。

 

「あのうしゅう」という言葉自体を初めて聞いたくらい何も知らなかったけど、読んでいるうちにこの集団に惹かれてしまいます。穴太衆とは石垣積み職人の集団で、ライバルである鉄砲鍛冶職人の集団、国友衆の人たちにも同時に惹かれてしまいました。実際に戦をする武士とは違う立場だけど戦には関わっている職人で、その職人の立場から戦をどのように見ているか、世界をどのように見ているか、その視点が現代の課題にも通ずるところがあり考えさせられました。

絶対に破ることができないと思わせる圧倒的な石垣を作ることで争いをなくせると考える穴太衆と、絶対に敵わないと思わせる圧倒的な鉄砲を作ることで争いをなくせると考える国友衆。でも結局はバランスをとることでしか争いを減らす努力をし続けることしかできないのかもしれません。今のロシアを見ていると、矛ばかりを巨大化していて対話したり折り合いをつけたりする楯が全然足りてないように見えます。プーチン京極高次立花宗茂のような人であったらよかったのに…など今にリンクさせながら読むと、今起きていることに対する視野が少し広がります。ウクライナ侵攻はどう考えてもひどいことなので、リンクさせる作業は楽しいことではないんですけどね。

世に矛があるから戦が起こるのか、それを防ぐ楯があるから戦が起こるのか。いや、そのどちらも正しくなく、人が人である限り争いは絶えないのかもしれない。

この文も考えさせられました。そうなんだろうけど、そうであってほしくない、でも…と。大きなテーマです。