園長のひとりごと

こども園、福祉全般、寺院関係、走ること、食べること、いろいろと。

選択する行為は、選択するもの以外を諦める行為でもある

私たちのこども園では子どもたちの選択を尊重しています。何をするかは子どもたちが考えて決めています。

こんな風に説明すると、「好きなことだけをやっているとガマンする力が育たないのではないか。」「やりたくないことに取り組んで、それをやり遂げて達成感を得る活動も必要ではないか。」と言われることがあります。たまにですが。

そんな意見に対して私たちが考えていることは、それで得られるのは達成感ではなく安堵感であるということ。達成感は、まず自分から挑戦しようと思い、それをやり遂げたときに得られるものです。自分で決めてやり遂げた上で得られる達成感を幼児期に十分に経験し、ガマンはその次だと思っています。

それに、自分でやりたいことを選ぶことはやりたい放題ではありません。あさりこども園では、何をして遊ぶか、誰と遊ぶか、どのくらい遊ぶか、何をどれだけ食べるか、どれだけ体を休ませるか、といったことを毎日考えて選択します。やりたいようにやっていると捉えられることもありますが、実態は少し違っています。

選択するという行為は、選択するもの以外を諦めるという行為でもあります。どれを諦めるか、ガマンするかを自分で決めて、何か1つに絞る行為です。大人でも選択した後に「この選択で良かったんだろうか?」といつまでも前に進めないことはあると思います。複数ある選択肢の中から何か1つに決めて行動するのは、簡単そうに見えて実は難しいことです。「これをやりなさい」と誰かに決めてもらった方が間違いなく楽です。

誰かが言うとおりに行動して思考停止するのではなく、常に自分で選んで決めないといけない状況に置かれて考え続けるのとでは、どちらがこれからの社会で必要になる力をつけているかは明らかです。

何か1つを選んでその他はガマンする、自分で決めたことに没頭する、決して楽なことではないし、とても貴重な体験を繰り返し行っていると、最初の質問をされる方には伝えたいです。

今日3月31日は年長児のこども園最終日でした。今日も「鬼ごっこできる?」と誘われたので、◯時からならできるよと伝えました。その時間は他の職員から用事を頼まれていた時間だったらしく、「ちょっと相談してくる」と用事を頼んでいた職員のところへ走っていきました。どんな相談をするのか近くで聞いていると、「用事を頼まれてた時間だけど、園長先生と鬼ごっこをしてもいい?その時間しか園長先生はダメみたい。最後の日なんだからいいでしょ?」と、それはまあ立派に相談というか交渉をしていました。

自分で考えて決める経験を繰り返していくことで、状況に応じて何を優先すべきか、そのためにはどうすべきかを考えることができるんだと思います。しっかり力をつけているんだなと、こども園最終日の年長児の姿を見ていて嬉しくなりました。